天体観測
「昨日も言ったけど、悪い予感はしてたのよ。いつかこの人は、私を脅かすって。もちろん、売春のことじゃないわ。私、本当は売春なんかしてないのよ。ただ、あのときはそう言った方がいいと思ったのよ。下手に変なことを言っちゃいけないって思った。けれど、ダメね。話を合わそうとしすぎたのよ。だから本当のことを、うっかり話しちゃったのね。あなたに言われるまで気が付かなかったわ」
「あなたがあのとき、万引き程度に留めておけば、僕もきっと気が付きませんでした」
「大きな獲物をちらつかせた方がいいと思ったの。あなたはそれで満足して、これ以上私のことを詮索しないんじゃないかって思ったのよ」
「獲物が大きい分、影が目立ってしまった」
「そうね」
それ以上何も言わないで、そのまま玄関まで歩き、靴を履いたとき、リビングから声がした。
「司。あなたは今以上につらい宣告をしに行くのね」
少し距離があるはずの神目薫の声は、何故かよく聞こえた。僕はドアの方を向いたまま、言った。
「僕にとって、社長やあなたは予行演習みたいなものですから。あなたにとっては出会い頭の事故みたいなものかもしれませんけど。実際、収賄事件を解決する気なんて、微塵もなかった。けど、目的地への到着を阻むように対向車が向かってきた。それを、取り除いただけです」
「神様と違って、あなたは慈悲深いわ」
僕は黙ってドア開け、庭に出て、静かにドアを閉めた。外の暑さを感じないくらい、感情が高ぶっていた。僕は走って車に戻った。
「あなたがあのとき、万引き程度に留めておけば、僕もきっと気が付きませんでした」
「大きな獲物をちらつかせた方がいいと思ったの。あなたはそれで満足して、これ以上私のことを詮索しないんじゃないかって思ったのよ」
「獲物が大きい分、影が目立ってしまった」
「そうね」
それ以上何も言わないで、そのまま玄関まで歩き、靴を履いたとき、リビングから声がした。
「司。あなたは今以上につらい宣告をしに行くのね」
少し距離があるはずの神目薫の声は、何故かよく聞こえた。僕はドアの方を向いたまま、言った。
「僕にとって、社長やあなたは予行演習みたいなものですから。あなたにとっては出会い頭の事故みたいなものかもしれませんけど。実際、収賄事件を解決する気なんて、微塵もなかった。けど、目的地への到着を阻むように対向車が向かってきた。それを、取り除いただけです」
「神様と違って、あなたは慈悲深いわ」
僕は黙ってドア開け、庭に出て、静かにドアを閉めた。外の暑さを感じないくらい、感情が高ぶっていた。僕は走って車に戻った。