天体観測
あれからもう、三年の月日が流れた。僕らは一つ大人になり、隆弘は三回忌を迎える。
あのときの目まぐるしさが嘘のように、僕の三年は長かった。まるであの事件が夢だったかのようだ。あるいは、僕が想像していた以上に、大学生活がつまらないか、だ。
僕らはあの後、一度だけ、隆弘を見に行った。
能勢の山奥に行き、一晩中大学から無断で持ってきた望遠鏡を覗いた。あいつは元気に輝いていた。もしかしたら、僕らよりずっとまともに生きていたかもしられない。
そして、今日に至る。
今日は隆弘が死んでちょうど三年目の日だ。僕らは能勢の、この前とは違うスポットに昼前からいる。虫が多いのが気になるけれどそんなことは言っていられない。
「今日は気持ちいいくらい晴れてるな」と、あれから少しばかり大人になった恵美が言った。
「三年前によく似てるよ」と、また大学から無断で持ってきた望遠鏡を設置しながら僕が言う。
「もっと暑かったわ」
「そうか?」
「うん」
「じゃあそうなんだろ」
「そうや」
僕らの会話に、特に変化は見られない。ベーシックはそんな簡単に変わるものじゃないんだ。
「隆弘に会えそう?」
「ああ」
「ホンマに?」
「第三天文部部長が言うんだ。間違いない」
「でも……あれって宇宙膨張限界説を唱えて存亡の危機なんちゃうの?」
「そんなのどんな天文学者だって言ってるよ。俺は人類火星到達説を否定しただけだ。片道でなら行けるかもしれないけれど、往復は無理だって」
「似たようなことやんか」
あのときの目まぐるしさが嘘のように、僕の三年は長かった。まるであの事件が夢だったかのようだ。あるいは、僕が想像していた以上に、大学生活がつまらないか、だ。
僕らはあの後、一度だけ、隆弘を見に行った。
能勢の山奥に行き、一晩中大学から無断で持ってきた望遠鏡を覗いた。あいつは元気に輝いていた。もしかしたら、僕らよりずっとまともに生きていたかもしられない。
そして、今日に至る。
今日は隆弘が死んでちょうど三年目の日だ。僕らは能勢の、この前とは違うスポットに昼前からいる。虫が多いのが気になるけれどそんなことは言っていられない。
「今日は気持ちいいくらい晴れてるな」と、あれから少しばかり大人になった恵美が言った。
「三年前によく似てるよ」と、また大学から無断で持ってきた望遠鏡を設置しながら僕が言う。
「もっと暑かったわ」
「そうか?」
「うん」
「じゃあそうなんだろ」
「そうや」
僕らの会話に、特に変化は見られない。ベーシックはそんな簡単に変わるものじゃないんだ。
「隆弘に会えそう?」
「ああ」
「ホンマに?」
「第三天文部部長が言うんだ。間違いない」
「でも……あれって宇宙膨張限界説を唱えて存亡の危機なんちゃうの?」
「そんなのどんな天文学者だって言ってるよ。俺は人類火星到達説を否定しただけだ。片道でなら行けるかもしれないけれど、往復は無理だって」
「似たようなことやんか」