天体観測
望遠鏡の設置が終わった僕らはそんなやり取りを車の中でしながら、夜を待った。
大阪の都市部でも、星を見ることは出来る。僕ら、第三天文部は実際に、キャンパスから土星を見た。つまり、僕らが能勢の、こんな山奥まで来たのは、理由があるようで全くないのだ。ただ、邪魔をされたくないだけだ。
「来るかな?」と、恵美が言ったときは、辺りはもう、完全な闇に包まれていた。
「来るさ。約束だからな」
恵美が頷いたのが気配でわかる。僕は左手で恵美の頭をくしゃくしゃにして、外に出た。
夜の山の空気は、夏とは思えないほど冷ややかで、半袖のTシャツでは少し肌寒いくらいだ。
僕は目を細めて空を見る。僕の遥か上空には、雲一つない。
僕は望遠鏡を覗き込む。目の前に、銀河が広がる。そこに広がる数々の星から、一際輝く星を探す。
そのとき、恵美が何かを叫んで、車のドアが勢いよく開く音がした。
僕の背後に、歩み寄る音がする。僕は、僕らの一等星を見つける。
僕は思いをはせる。あの事件に、果てなき銀河に、奏のプラネタリウムに、無限の星々に。僕らの天体観測は、ここからはじまる。すべてを清算した、今から。
「やあ、久しぶり」
大阪の都市部でも、星を見ることは出来る。僕ら、第三天文部は実際に、キャンパスから土星を見た。つまり、僕らが能勢の、こんな山奥まで来たのは、理由があるようで全くないのだ。ただ、邪魔をされたくないだけだ。
「来るかな?」と、恵美が言ったときは、辺りはもう、完全な闇に包まれていた。
「来るさ。約束だからな」
恵美が頷いたのが気配でわかる。僕は左手で恵美の頭をくしゃくしゃにして、外に出た。
夜の山の空気は、夏とは思えないほど冷ややかで、半袖のTシャツでは少し肌寒いくらいだ。
僕は目を細めて空を見る。僕の遥か上空には、雲一つない。
僕は望遠鏡を覗き込む。目の前に、銀河が広がる。そこに広がる数々の星から、一際輝く星を探す。
そのとき、恵美が何かを叫んで、車のドアが勢いよく開く音がした。
僕の背後に、歩み寄る音がする。僕は、僕らの一等星を見つける。
僕は思いをはせる。あの事件に、果てなき銀河に、奏のプラネタリウムに、無限の星々に。僕らの天体観測は、ここからはじまる。すべてを清算した、今から。
「やあ、久しぶり」