天体観測
僕はとりあえず何もやることがないのて、勉強をすることにして、部屋に入った。

僕の部屋はダイニングより数倍暑い気がする。それに加え、何故か湿度がやけに高い。

おかげで、全く勉強ははかどらず、汗は留まるところを知らなかった。

ここまで暑いと、すでに温暖化は取り返しのつかないところまできたんじゃないだろうかと、心配になってくる。

僕は勉強を潔く諦めて、本を買いに行くことにした。

冷たいシャワーを浴び直し、着古したポロシャツと、色褪せたジーンズを着て外に出た。

昼前の空の下は、セミが必要以上に自己主張をし、太陽はそれに負けないように、発光していた。二つの対決に、関係ない人類を巻き込んでほしくないものだ。

僕は近所の本屋まで歩いて行き、品定めをしたが、お目当ての本が見当たらなかったので、目に留まった『ティファニーで朝食を』を買うことにした。言うまでもなく、本屋は夏の楽園だった。

神崎刀根山線を南に向かっていると、前から前橋恵美が歩いてきた。

恵美は、僕に気付くと、この暑い中、走って僕に近づいてきた。

母親同士が昔からの知り合いで、比較的近所に住んでいる間柄とはいえ、こんな場所で会うと、少し恥ずかしい。

僕も、なんとなく恵美の方に歩み寄って、言った。

「こんな暑い中よく走るな」
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