天体観測
「こんにちは、寝坊助さん」

「ラジオ体操の帰りか」

「アホか。何時やと思ってんの?今からデートなの」

「そう」

「もしかして妬いてる?」 

「出会って早々なに言ってんだ。バカ」

「大丈夫よ、心配しないでも相手は司やから」

「暑さで頭がやられたのか」

恵美は黙って自分の鞄の中から、二枚の紙を取り出した。

「『奏』でやってるプラネタリウムのタダ券、もちろん行くよね?」

「行かない」

「何でよ?」

「暑いから『奏』まで歩けない」

「車出せばいいやん。さっき、おばさん見かけたとき走ってたから、車は家にあるやろ」

僕は恵美にわかるように舌打ちをし、仕方なくまた神崎刀根山線を、南に歩きだした。後ろから恵美もついてきている。

「何でさっきは出てくれへんかったん?」

家についた僕らは、開演時間までに少し時間があったので、中に入って時間を潰すことにしたのだった。

「暑さと睡魔とセミのトリオに一人で戦ってたからさ」

「結果は?」

「俺のギブアップ。やっぱり暑いな。コーヒーでも飲む?」

「冷たいココアがいいな」

「家に甘い飲み物はないよ」

「じゃあコーヒーにミルクでお願いします」
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