天体観測
「まあまあだよ」

「まあまあって……あんたねえ」

「僕は僕なりに考えてる。将来のこと、数分先のこと、色々とね」

「あら、頼もしいわね。まあ、好きにしたらいいわ。司もこの人に似て、飼い犬なんかにはなれないんだから。自由気ままに歩き回ればいい」

母さんはダイニングテーブルに置いてある煙草をとって、もう一本吸いはじめた。

「今日も何処か行くの?」

「うん」

「何処へ?」

「HIRO」

「じゃあ行くとき、この人を病院まで送ってあげて」

母さんは父さんを指さして、少し笑った。それはまるで、母親が寝ている我が子を見て微笑んでいるようだ。僕には母さんの笑みの意味がわからない。

「きっとこの人疲れ果てて、歩いてなんて帰れないわ」

「わかった。責任を持って送り届けるよ」

僕はやっと飲める温度になったコーヒーを、半分ほど飲み干して、風呂場に向かった。

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