天体観測
僕らは十一時前に家を出た。まだ恵美からの連絡はなかったけれど、隆弘の検査が十二時からある父さんに合わせて、家を出ることにしたのだった。

「よかったのか、時間」

バックミラー越しに見た父さんは、僕の方ではなく外を見ていた。

「別にいいよ」

「そうか」

今日は比較的に交通量が少なく、ストレスなく父さんの勤める斎藤病院に着いた。

「帰りも、迎えにこようか?」

「何時に終わるかわからない」

「家で母さんの手料理を食べなよ。七時ぐらいに迎えに来るから」

父さんはしぶしぶ「わかった」と言って、病院に戻っていった。

僕は病院の駐車場に車を置いて、歩いて奏まで行くことにした。斎藤病院と奏は歩いても、一分とかからないのだ。

HIROにはマスター以外誰もいなかった。時刻は十一時十五分。早い人ならもう昼食を食べに来ていてもおかしくはない。

「閑古鳥が鳴いてるみたいだね」

「みたいやない。鳴いてる」

「今日も使わせてもらうよ」と言って、僕はテーブル席に座った。今日はこっちの方が、何かと都合がいい。

「とりあえずアイスコーヒーで」

「かしこまりました」

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