天体観測
「この頃、毎日来てるな」

マスターはコーヒー豆を挽きながら、僕に向かって言った。僕はコーヒーを待ちながら『ティファニーで朝食を』を読んでいた。

「ここ以外に、涼しい場所がないんだ」

「少年の家だって、冷房くらいあるやろ」

マスターは挽き終わったコーヒー豆をカップに入れて、僕のところに持ってきた。

「僕は真剣に温暖化のことを考えてるんだよ。それより、ここはアイスコーヒーをこんな形で出すようにしたの。これじゃ出来上がってもホットじゃないか」

「うまいコーヒー飲ましたるから、もうちょい待っとき」と言って、煙草を口に加えてから、マスターは奥の方へ戻っていた。

早くも読書に飽きてきた僕は、恵美とコーヒーが来るまで、事件ついて考察することにした。

頭の中に真っ白なノートが出現する。まずは被害者の名前を書き込む、その次に事件日を、被害状況を、あえて事件現場は書かないでおく。ここにはいろいろな可能性がある。犯人は仮にXとしよう。

次のページに仮説を書いていく。

何故Xはあんな逃げ方をしたのだろう。バレるのが怖いと思ってすぐ逃げるのならわかる。でもXは事故の痕跡を持ち去っている。焦っている犯人わざわざそんな時間のかかることをするをするだろうか。

ここで仮説。

隆弘は別のところで轢かれ、運ばれた。

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