天体観測
「やっぱりな、監督とか選手とかそういうもんやないよ。この調子の悪さは。気合いが足りんねん。気合いが」

「ちゃいますって。やっぱりもっと若手を使って活性化していかな。気合いどうこうで、どうにかなるんやったら、みんな打率十割ですよ」

マスターと恵美は意気投合して、「阪神タイガースの現状理解と今後の対策」を熱論していた。恵美はカウンター席に移動していた。

BGMは『Yesterday Once More』。東の窓は薄暗く、外では天気予報の言う通り、雨が降りはじめていた。

「雨降ってきてるやん」

僕に向かって恵美が声をかける。

「ああ、最悪や。私傘持ってきてへん」

「車があるから大丈夫」

「車までどうすんのよ」

「走ればいい」

「こんなヒラヒラで走りたくないの」

「どのみち、今すぐ行くわけじゃないんだ。止むかもしれないだろ」

「どっか行くんか?」

カウンターに座っているマスターが僕の方を向く。

「デートなんですよ」

「違う」

僕はすぐ様ツッコミをいれる。

それから、「宝探しです」と訂正をしておいた。

「おもしろそうやね」

「僕もそう思う」

「ところでマスター。さっき言ってた投手陣のことやねんけど……」

マスターと恵美は阪神タイガース談議に戻っていた。

僕はまた窓の外に目を向けた。雨はよりいっそう、激しさを増していて、現場検証をするには少しつらい天気になってきた。
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