吸血男子
『だが…私たちモンスターより人間は弱く儚かった』

「そうだね…」




『会うたび会うたびに衰えていく千沙を見ているのは辛かった…モンスターなんかに生まれなければモンスターなんか存在しなければ私は千沙と人生を共にできたかもしれないのに』





 淡い恋をしてたんだ、スーくんは。





『私はモンスターを呪った。うらみではない、一瞬の呪いで殺してしまったんだ』


「そっか…」


『今からでもいい…千沙に会いたかったんだ。そんなとき、美梨亜を見つけた。千沙かと思ってここに連れてきたら…違った』





 千沙ちゃんと私を見間違えたスーくんはすごく悲しかったに違いない。





 私はスーくんと千沙ちゃんを会わせることはできない。






『少しでも似ている美梨亜を千沙に置き換えて考えていたんだ』





 すまない…と俯いた少年はもう8歳や9歳の顔つきじゃなくて大人の雰囲気を漂わしながら小さな手で私の手を握った。





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