君を愛する

「彩香は脆すぎ」
　美咲がそう言うと、皆が大笑いした。
「もうそろそろ卒業式始まるから、会場に行くぞ」
　秀に促され私たちは会場に向かった。
　卒業式が始まり、淡々と式が進んでいった。最初は我慢していたが、式が進むうちに私は泣き出してしまった。
　ふと隣を見ると、美咲や里穂、愛恵も泣いていた。秀は男ということもあってか、泣いてはいなかったが少し寂しげな顔だった。
　卒業式が終わり、私たちは本当の最後に写真を一枚撮りカラオケに行くことにした。
　カラオケに行った後、私たちは話し合った結果解散することにした。
　卒業式が終わってからは、優人と一緒に穏やかな日々を暮していた。優人と一緒に公園で遊んだり、修二との思い出の地である河原に行って弁当を食べたり、そんな何でもない幸せが続いた。
　そして桜が咲き始めた頃、私は入社式を迎えた。入社式はやはり緊張したが、優人のためにも頑張っていこうという決意を固くした。
　私が入社してから五年後、優人は小学六年生になっていた。私はある日、優人にある物を見せることを決めていた。
　修二が生前、優人へのメッセージを残したビデオレターを私に渡していた。
　修二からは、優人がある程度大人になってからこのビデオを見せるように言われていた。まだ小学六年生の優人には早いと思ったが、逆に早くビデオを早く見せた方が優人のためになると思った。
「優人、少し見せたいものがあるんだ。こっちに来て」
　優人は少し不思議そうな顔をしながらも、私の後に付いてきた。私は修二が残していったビデオをセットし、再生ボタンを押した。
　ビデオが流れ始めると、修二が出てきた。この時の修二は、白血病と宣告された時から間もない時で、この時から自分は死ぬんだと思っていたんだろうか……。
「優人、俺がお前のパパだ。優人がこれを見るときには、俺はもういないだろう。パパは白血病という病気に罹ってしまって、そう長くは生きられないと思う。でも、これだけは覚えていてほしい。俺がもし死んでも、俺は優人のことを考えているし想っている。だからこそ、悩んだり挫けそうになったりしたらママに相談してほしい。俺がこの世で一番愛した女だからだ。俺が守ってやることはできないけど、きっと優人だったら大丈夫だ。最後にこの言葉を送ろう。優人、強く生きれ。そして、ママを守ってあげろ」