君を愛する
「あ、今ので英単語一個どっかに飛んでった」秀は最後まで私たちを笑わせてくれた。
 私たちは各自の試験会場に向かい、テストを受けた。テストはやっぱり難しかったけど、私は精一杯の力を発揮できた。今までも一生懸命やってきたし、結果はどうあれ私は、悔いは残らないと思った。
 皆が試験を終わり、待ち合わせ場所に皆が揃った。
「皆、試験どうだった?」彩香が問いかけた。
「んー、私は上々の出来だと思うよ」
「美咲は元々が頭良かったもんね。私は微妙なラインかな」里穂がそう言うと、愛恵も同調した。
「俺は結構手応えはあるよ。俺受かっちゃうかもよ」
「秀が受かったら、私何か奢ってあげるよ」美咲がそう言うと、秀はムッとした顔をした。
「だから言ったろ? 俺はラッキーボーイだって」そう言うと、皆が笑い出した。
「そういえば、修二ってどうしたんだろう。彩香と急に別れてから学校にも殆ど来なくなったし、大学受験もしてないはずだよね?」愛恵が歩きながら話を切り出した。
「本当にどうしたんだろうね。秀は何か知ってるんじゃないの?」美咲が秀に話を振ると、秀は黙り込んでしまった。
「秀、何か知ってるね。修二に何があったの? それって、彩香と別れたのと関係してる?」美咲に問い詰められると、秀は観念したのか話し始めた。
「とりあえず立ち話じゃあれだから、近所の喫茶店に行こう」秀がそう言って、皆は喫茶店に向かった。
 喫茶店に着くと、彩香が話を切り出した。
「ねえ、秀。修二に何かあったのか秀が知ってる範囲で教えて。私、修二と別れてからできるだけ考えないようにしてたけど、やっぱり頭のどこかで修二のことを想ってきたの」
 彩香が強い口調で言うと、秀は少し考え込んでから話し始めた。
「彩香、落ち着いて聞いてくれ。修二は、白血病なんだ……」秀が俯きながら言うと、一瞬空気が凍りついた。
「え、それってどういうこと。あの修二が、白血病?」彩香は明らかに動揺していた。思ってもいなかった事実だったから、あまりにも受け止めきれなかった。
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