君を愛する
「秀、それって本当なの? もし本当だったとしても、何で私たちに秘密にしてたわけ?」
美咲は彩香の気持ちを代弁した。
「ああ、本当だ。あいつは、今すぐに死ぬような状況ではないらしいけど、いずれは骨髄移植をしなければならないらしい。俺は、あいつからずっと口止めされてたんだ。特に彩香には絶対言うなって口止めされてた。修二は、決して彩香のことを嫌いになったわけじゃない、優人君のことを捨てたわけでもないんだ。修二は彩香のことを悲しませるようなことはしたくない、悲しい顔を見たくないといつも言っていた」
 秀が言い終わると、彩香は今にも泣き出しそうな顔で話し始めた。
「なんなのよ、それ……。何で修二はいつも自分勝手なの」彩香はそう言うと、泣き出してしまった。秀がまた話し始めた。
「修二はいつも彩香のことを気にしていたよ。彩香は元気にやっているか、体調を崩していないか、優人はどういう感じだ、いつも口を開けばそればかりだった。修二も彩香とは別れたくはなかったけど、彩香のことを思っての決断だったそうだ」
「秀、修二の入院している病院を教えて。修二に会いに行く」彩香は秀に病院を聞くと、一人で喫茶店を飛び出た。
 彩香は病院に着くと、受付で修二が入院している病室を聞いた。そこの病室に入ると、修二は窓の方を眺めていた。
 私が病室に入ってきたのに気付いた修二は、目を見開いた。
「彩香、何でここが分かった? というより、何で俺が入院していることが分かった? まさか、秀から聞いたな?」
「そうだよ、秀から聞いた。私と別れてからも、毎日私ことしか想ってなかったっていうことも聞いた。何で修二は、いつも自分勝手なのよ」彩香は泣きながら言った。
「彩香はそういう風に泣くから嫌だったんだ。俺は、彩香には泣いてほしくない、ずっと笑っていてほしい、そう思って彩香には言わなかったんだ」
「私は、修二と別れてからずっと辛かった。一人で優人の世話もしなきゃダメだったし、誰にも私の苦しみは分かってくれなかった。そんな時に修二がいてくれたらって、ずっと思ってた。私には、修二が必要なの」
「俺はいつ死ぬか分からない。そんな俺と一緒にいたら、彩香のことを幸せになんかしてあげられない」
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