君を愛する
「分かった。じゃあ、今日はもう帰るね」
 修二に微笑みかけながら、私は手を振って病室から出た。
 それからも毎日のように修二の病室に通った。しかし、卒業式が間近に迫ってきたから、卒業式の練習が始まった。そのせいであまり修二のお見舞いに行けなくなった。
 卒業式の練習で久しぶりに美咲や秀たちに会った。その時に、もしかしたら修二が卒業式に来てくれるかもしれないことを伝えた。
「本当か? 最後はクラス全員が集まるんだな」
「最後の最後でクラスが集まって良かったね」秀と里穂が嬉しそうに言った。
「まあ、あくまで主治医から外出許可が下りればっていう話だけどね」私は苦笑いしながら言った。
 それから数日間は卒業式の練習が行われ、卒業式の本番の前日に秀たちと一緒に修二のお見舞いに向かった。
「修二、俺らもお見舞いに来てやったぞ」
「皆久しぶりだな。でも、秀は来なくても良かったのに」
「うわ、やっぱり修二は薄情者だ」
 秀はそう言いながら里穂に抱きついた。なんで秀はすぐ里穂に抱きつきたがるのかはよく分からないが、いつも修二と秀の会話は笑えてくる。
 皆が揃ったのは久しぶりだったから、会話が弾んでいった。そんな時、修二があることを思い出したのように話し始めた。
「そういえば言うの忘れてたけど、明日の卒業式に行けるようになったから。主治医に明日は卒業式だからどうしても行きたいんだって何回も頼み込んだら、渋々明日だけ外出許可を出してくれたよ」
「本当に? 良かったじゃん」私は自分のことのように喜んだ。
「でも、卒業式が終わったらすぐに病院に戻ってくるようにっていう条件付きだけどな。どこにも寄り道をせずに病院に戻ってきなさいって言われたよ」
「それでも良かったじゃん。卒業式が終わったらここの病室でお祝いでもすれば良いし」
 私はそう提案し、皆も同調してくれた。それからも明快時間が終わるまで他愛のない話をしていた。
「じゃあ、もうそろそろ面会時間終わるから私たちは帰るね」
「おう。じゃあ、明日の卒業式で」
 修二の返事を聞くと、私たちは修二の病室から出ていった。
 翌日、私は早めに身支度を済ませ、修二のことを迎えに行くため病院に向かった。
 病院に向かっている途中、私は高校三年間の思い出を振り返っていた。
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