君を愛する
「制服姿なんて誰も一緒だろ。じゃあ、もうそろそろ学校に行こうか」
 修二はそう言うと、私の手を繋いで病室から出て学校に向かった。
 学校に向かう間はお互いにほとんど言葉を発さなかった。卒業式だからお互いに緊張していたからだろう。そんな時、私が修二に話しかけた。
「というか、修二よく卒業できたね。秋頃からずっと学校行ってなかったのに」
「ああ、俺の親が何回も校長に頼み込んだらしい。俺は当分学校に行けなくなるし卒業までもう少しだから、特別に俺のことを卒業させてくれって」
「そうなんだ。まあ、どうあれ修二と一緒に高校卒業出来て嬉しいよ」
「俺も彩香と一緒に卒業出来て嬉しい」
 そんな話をしながら学校に着くと、校門の前には秀たちが待っていてくれた。
「修二、来るの遅かったな。今日でこの校舎ともお別れだな。まあ、家の近くだからすぐに来れるけどな」
 秀が寂しげに校舎を見ながら言った。今思うと、私たちが高校三年間お世話になったこの校舎とお別れになるのは寂しかった。でも、この高校に入ってなければ今の私はいなかったと思うと、とても感謝している。
「今日でこの校舎の見納めだと思うと、感慨深いものがあるな。でも、俺はこの高校に入って良かったと思っている。彩香とも付き合えたしな」
「でも、修二は私のことを一回捨ててるけどね」
 私が嫌みを込めて言うと、修二は呆れ顔で言った。
「だから彩香のことを思ったからそうしたんだ。彩香には悲しい思いをさせたくないって思って、俺の中では苦渋の決断だったんだ」
「分かってるって」
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