君を愛する
 私は微笑みながら修二の頬に優しくキスをした。
「そこのラブラブのお二人さん、早く教室に行くぞ」
 秀に促され、私たちは手を繋ぎながら秀たちの後について行った。
 教室に入ると、黒板には修二へ向けた言葉が書かれていた。それは、修二お帰り、ずっと待ってたよ、などの嬉しい言葉ばかりだった。
 修二がその言葉を一通り見ると、今にも泣き出しそうな様子だった。秀たちは前から知っていたらしく、ニヤニヤしている。
「お前ら、こんなことするなんて聞いてないぞ」
「事前に言ったらサプライズにならないじゃん」
 秀が笑いながら修二の肩を叩いた。他のクラスメートも「修二、お帰り」などと声をかけてくれた。修二は少し泣いているような感じに見えた。
「まあ、それもそうだな。みんな、本当にありがとう。このクラスで良かった」
「修二が泣くなんてお前らしくないぞ。涙は卒業式の時にとっておけ」
 秀がそう言うと、クラス中に笑いが起きた。そうこうしている内に担任の先生が教室に入ってきた。
「今日は修二が戻ってきたので、卒業式には一人も欠かさずに参加できることになった。なので、皆の心に思い出として残るような卒業式にしてください」
 先生はそれだけ言うと、体育館に向かうため教室から出るように言った。
 クラスごとに整列して体育館に入ると、下級生や親たちがずらっと座っていた。私の親を見つけると、思わず微笑んでしまった。
 卒業式が始まり、終盤に差し掛かると泣き始める人が出てきた。私はもちろん、修二や美咲たちも泣いていた。唯一泣いてなかったのが秀だったが、今思うと秀が泣いたところを一度も見たことがないと、ふと思った。
 卒業式が終わり自分たちの教室に戻ると、お互いに泣きながら抱き合っていた。ほとんどの人は今日でお別れになることになる。
「俺たちは大学も一緒だから、また四年間一緒だな」
「秀とまた四年間一緒だと思うと、気が重いけどね」
 美咲が嫌みを込めて秀に言った。秀はムッとした顔をした。
「本当は嬉しいんじゃないの?」
「何言ってるの、自惚れすぎ」
 美咲は秀の背中を強く叩いた。そんな会話を見ていたら、自然と笑えてくる。
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