君を愛する
 修二は大学の入学式の日を覚えていたらしく、そう聞いてくれた。
「うん、楽しみだよ。美咲たちも一緒だから結構心強い。まあ、それでも新しい友達ができるかどうかっていう不安もあるかも」
「仲の良い友達が最初からいるのは結構心強いな。美咲は社交的で誰にでも話しかけれる奴だから、彩香も自然に友達できるだろ」
「そうだよね」私は短く答え、窓の方を見て空を眺めた。
 そんな穏やかな毎日が続き、とうとう大学の入学式を迎えた。ついこの前まで高校の卒業式をやったばかりなのに、もう大学の入学式を迎えるとなると、もう少し高校生をやりたかったなと私は思った。
 大学は家から少し遠い所にあるので、朝修二に会いに行くことはできなかった。それでも修二に電話をして、声を聞くだけで落ち着くことが出来た。
 私は美咲たちと一緒に大学に行く約束をしていたので、急いで駅に向かった。
 駅に着くと、秀以外の皆は揃っていた。
「お待たせ。秀はまだ来てないの?」
「秀はあと二・三分で着くって。あいつは本当に時間にルーズだからね」
 美咲は苦笑いしながら呆れ顔で言った。
 そうこうしているうちに秀がやってきた。秀は息を切らせながら走ってきた。
「悪い、寝坊した。早く行こう」秀は顔の前に手を合わせながら言った。
「本当だよ。早く行かないと入学式に遅刻しちゃう」
 私たちは急いで切符を買い、電車に乗り込んだ。
 電車に揺られ数十分、大学の最寄駅に着いた。私たちは改札口から出ると、周りを見渡した。
「ここから大学って近いんだっけ?」秀が聞いてきた。
「うん、確か徒歩で五・六分だったはず。一応駅員さんに大学までの道のりを聞いてくる」
 美咲はそう言い残し、駅員さんのもとへと走っていった。
 数分後、美咲が戻ってきた。
「ちゃんと聞いてきたよ。案外道のりは分かりやすかった。さあ、早く行こう」
 美咲に促され、私たちは美咲の後に付いていった。
 大学に着くと、校門のところに大学の関係者の人たちが立っていた。その人たちに入学式が行われる場所を聞き、そこに向かった。
 入学式会場に入ると、初めて見る人たちばかりだった。私は人見知りなのでこういう状況は苦手だが、美咲は気兼ねなく話しかけれるんだろうなと思ったら、少し羨ましいと思った。
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