君を愛する
 修二はそう言うと、口笛を吹きながら窓の方に目を移し、話をはぐらかした。私たちがこんなバカらしい話をしているうちに、すぐに面会時間の終わりがやってきた。
「じゃあ、私たちは面会時間終わるから帰るね。明日から大学が始まるから、夕方からしかお見舞いに行けないけど、許してね」
「ああ、分かった。明日からは少しだけ寂しくなるな。あと、今度病院に来る時は優人も連れてきてくれ。久しぶりに優人の顔が見たい」
「修二は寂しがり屋だからね。じゃあ、週末に優人のこと連れてくる」
「ありがとう」
 修二の返事を聞くと、私たちは病室から出ていった。
 病院から出た後、明日からも一緒に大学に行くという約束をして私たちは解散した。
 私は大学という新しい環境になったせいか、今日は家に着くと疲れてそのまま寝てしまった。
 翌日、寝坊してしまった私は急いで身支度をして駅へと向かった。
 駅に着くと、他の皆はすでに駅に着いていた。
「今日は彩香が寝坊か。俺より遅いってどういうことだよ」
 秀は笑いながら言った。
「ゴメン。これでも急いできた方だよ」
「まあ、急いで行けば間に合いそうだし、結果オーライということで。じゃあ、急いで行こう」
 美咲が口を挟むように言うと、私たちは急いで改札口を通った。
 私たちはギリギリで大学に着くことが出来た。私たちが教室に入る頃には、結構な人数がすでに席に座っていた。
 私たちが一緒に座れる場所はすでに前の方しかなかったので、仕方なく前の席に座った。
 間もなくして大学の先生が教室に入ってきた。
「えー、これから君たちは大学生活を送ることになりますが、今日はそのためのオリエンテーションを行いたいと思います」
 そんな前置きをしてから、オリエンテーションが始まった。
 オリエンテーションということもあってか、今日は午前中のみで終わった。これからは履修登録などをやって、授業は来週かららしい。
 今日は午前中で大学が終わったため、美咲たちとは大学で別れて急いで病院へと向かった。
 病院に着き修二の病室に入ると、先に修二のおばさんが来ていた。
「あら、彩香ちゃん。今日もお見舞いに来てくれたのね。毎日病院に来るのは大変でしょう」
「いいえ、修二と会えるだけで嬉しいので、大変だとは思いません」
 私は軽くお辞儀をしながら言った。
< 76 / 103 >

この作品をシェア

pagetop