君を愛する
「おばさん、大丈夫ですよ。修二は強いですから。それに、私の傍から絶対にいなくならないって約束したんですから……」
 私はおばさんにそう言って、修二の傍に駆け寄った。
「修二、ずっと私の傍からいなくならないって約束してくれたよね? こんなに早く死ぬなんて絶対許さないからね。優人の成長だって陸に見れてないじゃん。修二、目を覚ましてよ……」
 私は泣きながら手を握りしめた。ずっと「お願い、死なないで……」と叫んでいた。
 しばらくすると、修二が薄らと目を開けた。
「修二? 私が分かる? 諦めないで、病気なんかに負けないでずっと生きていくって約束したでしょ」
 私は泣き喚きながら言った。修二は最後の体力を振り絞って私に話しかけた。その声は、耳を澄ませないと聞こえないくらいの弱さだった。
「ゴメン、彩香。俺、病気に勝てなかった。彩香と優人のことを守れなかった。これからも幸せになれよ……。あと、このカメラを現像したらいい。きっと、このカメラに思い出が詰まっている。彩香、絶対に幸せに……」
 修二は最後まで言い切れずに、また意識を失った。
「修二? まだ死なないで、私にはまだ修二が必要なの。まだまだ修二としたいことがあったのに、何で勝手に逝っちゃうのよ。いつも修二は自分勝手なの……。私を一人にしないで……」
 私はずっと修二の手を握りながら泣き喚いていた。
 主治医と看護師は懸命の治療をしてくれていたが、いずれ心臓が止まったことを知らせる人工呼吸器の機械音が聞こえてきた。
「修二、死んだら駄目だよ」
 私はその機械音が聞こえた途端、最後にそう叫び今まで以上に泣き喚いた。
 そんな時、美咲たちが息を切らせながら病室に入ってきた。私が泣き喚いているのを見て、どういう状況かは察知したらしい。
 そんな中、懸命に最後まで治療をしてくれた主治医が小さな声で「御臨終です」と言って、小さく頭を下げた。
 主治医が病室から出ていった後も、私は泣き喚き続けた。
 私にとって、修二が私の傍からいなくなることは微塵たりとも考えられなかった。それでも、修二は私の前からいなくなってしまった……。それは今すぐには受け止め難い事実だった。
 ずっと泣き喚いていた私を、美咲は優しく抱き寄せてくれた。
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