君を愛する
 どんなに想いを巡らせてもどうしようもないと分かっていたが、写真を見ると考えずにはいられなかった。私はその後一時間近く泣いていた。
 結局、私は今週一回も大学に行かなかった。そして修二の通夜の前日になっても、私は行くかどうかを迷っていた。
 まだちゃんと気持ちの整理が出来ていないのに、修二の通夜などに出席したら更に立ち直れないかもしれない、そう思っていた。
 この前現像してもらった写真を見ながら考えていると、私は決心した。
 そして修二の家に電話を掛けた。
「もしもし。彩香です」
「あら、彩香ちゃん。どうしたの?」
「私が今修二の通夜などに出席したら、今よりも立ち直れないかもしれません。色々と考えましたが、今の私には出席できません」
「そう。でも、修二は彩香ちゃんに一番見送ってほしいと思うの。それは分かってほしい。それでも、出席は出来ない?」
 私は考え込んでしまった。そう言われると、それが一番正論だと思うから。でも、今の私の答えにはそれが一番の答えなのか、とも考えてしまう。
「……じゃあ、告別式だけには出席させてください」
「そう、嬉しいわ。修二もきっと、喜ぶと思うわ」
「じゃあ、失礼します」
 私は電話を切ると、再びベッドの上に横になり考え込んだ。
 そして告別式の日、美咲たちが私の家にやってきた。
「彩香、大丈夫? 無理しなくても良いんだから」
「私は大丈夫。美咲、ありがとう」
 そして私の親が運転する車で告別式の会場に向かった。
 告別式の会場に入り仏壇の方に目を向けた。
 仏壇に飾られている修二の写真は、とても良い笑顔だった。改めて修二の笑顔の写真を見ると、心苦しくなってしまう。
 私はずっと俯いていると、心配した美咲が私の顔を覗きこんだ。
「彩香、本当に大丈夫?」
「大丈夫だよ。少し思い出に浸かっていただけだから」
 私は無理やり笑顔を作って返事をすると、美咲は私の手を握ってくれた。
「そんなに無理しなくても良いんだよ。辛い時には辛いって、ちゃんと言わなきゃ。何でも自分ひとりで抱え込まない方が良いよ」
 美咲からそう言われると、私は泣き出してしまった。
「美咲、ありがとう。修二とは楽しい事も辛い事も色々とあったな」
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