君を愛する
「そうだね。でも、楽しかった事も辛かった事もひっくるめて思い出になるんじゃないかな? 辛かった事も無理やり忘れないで、綺麗な思い出になるように頑張ろうよ」
「そうだね」短く答えると、私は美咲の手を強く握りしめた。
 告別式が始まると多くの人が泣いていて、私はもちろん美咲たちも泣いていた。
 修二、こんなに悲しんでくれる人がいるんだよ。何でこんなに早く逝ってしまったの? 私は今でも修二がいなくなってしまった現実を受け止められなかった。告別式に出席しても実感は湧いてこなかった。
 告別式が終わると、修二は火葬された。火葬が終わり修二の骨を見ると、やっと少し修二がいなくなってしまった実感が湧いたような気がした。
 修二の骨を拾っている時、それでもこの骨は本当に修二のだろうか、と思ってしまう。この現実をしっかりと受け止められるときは、いつ訪れるのだろうか。
 修二の骨を全部拾い終わり、私たちは車で修二の家に向かった。
 私たちは修二の部屋に入ると、色々な思い出の品を一つ一つゆっくりと見ていった。
「私、ここの部屋で色々とあったな。何でもないことで大笑いしたり、喧嘩もしたりしたな。今となっては、そんなことさえ出来ないんだね……」
「彩香、そんな寂しげな顔しないでよ。私たちまで悲しくなっちゃうじゃない」
 美咲は思わず涙が零れた。私も美咲につられて泣いてしまった。
「ごめんね。私、これから頑張るよ」
 私は涙を拭き、声を震わせながら言った。
「そうだよ。彩香がそんな感じだったら、修二が悲しむぞ? 修二の分まで精一杯生きていこうよ」
 秀は明るく振る舞いながら、私の頭を優しく撫でてくれた。
「秀、ありがとう」
 一通り修二の部屋を見終えると、私たちは居間へと向かった。
 居間に入ると、憔悴しきった顔をしたおばさんが食卓の椅子に座っていた。
「おばさん、大丈夫ですか? 顔色悪いですよ」
 里穂が心配そうな顔でおばさんの顔を覗きこんだ。
「私は大丈夫よ。修二の部屋は全部見終わった?」
「はい。見終わりましたけど、おばさん少し休んだ方が良いんじゃないですか? すごいやつれた顔していますよ」
「最近ずっと寝れてなくてね。ずっと修二のことを考えてしまって」
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