君を愛する
「そうなんですか。でも、修二の分も頑張って生きていかないと、修二が報われないと思いますよ」
「そうよね。それより、里穂ちゃんたちはもう帰るの?」
「はい。一通り修二の部屋は見終えたので、帰ろうと思います。おばさん、ちゃんと寝てくださいね。じゃあ、失礼します」
 里穂がお辞儀をすると、私たちも連れて頭を下げた。
 私たちが帰ろうとすると、おばさんが呼び止めてきた。
「彩香ちゃん、渡したいものがあるの。少し時間大丈夫かな?」
「はい、大丈夫ですよ。じゃあ、美咲たちは先に帰ってて良いよ」
 私がそう言うと、美咲たちは再びお辞儀をして帰っていった。
 私はおばさんの後ろに付いていき、ソファに座るよう促された。そして私の前にあるものが差し出された。
「おばさん、これって何ですか?」
 私は不思議そうな顔で聞いた。おばさんは少し考え込むように黙り込んでから離し始めた。
「これは修二が白血病と宣告された時から書いていた日記なの。彩香ちゃんにこの日記を見せるかどうか正直悩んだんだけど、修二がどういう日々を送っていたのかを彩香ちゃんに知ってもらいたくて」
 私はその日記を手に取り、一ページ目を捲った。一ページ目には白血病と宣告された日のことが書かれていた。
 九月二十三日、医者から白血病と宣告された。頭が真っ白になってしまった。俺には彩香と優人がまだいるのに、何で俺が白血病になるんだ。俺は死ぬ運命を辿るのかな? 彩香は俺が白血病と知ったら悲しむんだろうな。彩香には絶対知られないようにしないとダメそうだ……。
 一ページ目にはこう書かれていた。私に別れを告げたつい一週間前の日付だった。
 私は一ページ目を読み終えると、勢いよく日記を閉じて泣き出してしまった。そんな姿を見たおばさんが話し始めた。
「修二はいつも彩香ちゃんのことを気にかけていたわ。というより、口を開いたと思えば彩香ちゃんのことばかりだったの。自分の病気なんかより彩香ちゃんの方を心配していたわ」
「そうなんですか。私は修二と別れてから、修二に捨てられたと思ってずっと恨んでたんです。それでも修二がこんなに想ってくれていたなんて……。おばさん、少しの間日記を借りても良いですか?」
「ええ、良いわよ。気が済むまで日記を読むと良いわ」
< 90 / 103 >

この作品をシェア

pagetop