君を愛する
私は涙を拭きながら深々と頭を下げながら、「ありがとうございます」と言った。
「じゃあ、私もここで失礼します」
 そう言い残して私も自分の家へと向かった。
 家に着き自分の部屋に戻ると、鞄から修二の日記を手に取った。日記を眺めていると、急に自分も修二のもとへ逝きたいという思いに襲われた。
 私は修二がどういう思いで白血病の宣告を受けたのか、それからどういう思いで私と別れたのかを知りたかったので日記を読み始めた。
 日記を一ページずつゆっくりと読み始めると、本当に私のことばかりの内容の日記だった。
 彩香は風邪を引いていないかな、元気にやっているのか、またクラスメートにいじめられていないのか、そんな私を心配する言葉ばかりだった。自分が死ぬかもしれない病気に罹っているのに、自分の病気を心配する言葉が全くなかった。
 何で私のことをこんなに心配してくれていたのに、私と別れていったんだろうと思った。私の方こそこんなに想っていたのに……。
「修二は本当に自分勝手だよ。こんなに私のことを想っていたのに、私の傍にはいてあげられないって、本当はずっと傍にいてほしかったくせに……」
 私はそう言って日記を壁に投げ捨てると、そのまま泣き出した。
 私には修二に対して何もできなかったという無力感だけが伸し掛かった。修二は闘病生活の間本当に幸せだったのか、私は何もできなかったのに悔いのない日々を送れたのか、という無念しか残らなかった。
 ベッドに横になり自分の顔を枕に押し付けて泣き続けていた。
 どのくらいの時間が経っただろう、私はやっと泣き止むと再び日記を手に取った。その日記を持ったまま外へと出かけていった。
 私は日記を持ちながら、修二とのいつものデートコースだった道を歩き続けた。いつもの道を歩き続けると、いずれ修二と会えるんではないかという淡い期待を持ちながら歩き続けた。
 いつものデートコースの一つだった橋を歩いている時だった。私はふと空を見上げると、修二が空から見守ってくれているような気がした。そんな時、私は修二のもとへ行ってまた二人で過ごしたい、と私の脳裏をよぎった。
 そんな衝動的な気持ちに駆られて、私は橋の柵に足を掛けた。ここの橋の高さだったら、修二のもとへ行くのには十分だと思った。
 そんな時、私の後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
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