君を愛する

「お母さん、就職先が内定したよ。もちろん一番入りたかった会社じゃなかったけど、今回決まった会社も入りたかった会社の一つだったからね。とりあえず就職先が決まって安心したよ」
「そう、良かったじゃない。これで修二君にも報告出来るわね」
「うん。私、早速修二の家に行ってくる」
　私はそう言い残し、就職内定の紙だけを持って家を飛び出した。
　修二の家まで休まず走り続けると、息を切らせながらインターホンを押した。
「はい、どちら様？」
「彩香です。修二に少し報告したいことがあるので来ました」
「そう。入って良いわよ」
「ありがとうございます」私はお礼を言うと、家に入った。
　私は居間へ向かうと、おばさんは笑顔で迎えくれた。
「これからお茶でも出すわね。それより、今日はどうしたの？」
「ついさっき面接を受けていた会社から就職内定の封筒が来て、それを修二に報告をしたくて」
「そう、おめでとう。きっと修二も喜ぶわ。彩香ちゃんも来年の春から社会人なのね。時間が経つのは早いものね」
　おばさんは寂しげな顔で言った。そう、修二の死からもう三年が経っていた。今思うと、毎日が大変な日々だったので過去を振り返る暇なんてなかった。でも、修二がいなくなってから三年経つと思うと、やっぱり悲しいものがあった。
「じゃあ、修二の仏壇に線香をあげても良いですか？」
「ええ、良いわよ」
　私は修二の仏壇へと向かい、その前に座った。
「修二、私やっと就職先が決まったよ。来年から社会人になる」
　線香をあげながら手を合わせ、修二に報告した。
　修二はこの報告を聞いて、どう思ってくれているのだろう……。修二の死から三年が経った今、誰もが色褪せることなく修二が心の中で生き続けている。
「修二もきっと天国で喜んでくれていると思うわ。彩香ちゃんのことは修二が一番喜んでいたから」
「そうだと良いんですけど。修二に喜んでくれることが私の一番の幸せですから」
　私は微笑みながら言うと、仏壇の前から立った。
「彩香ちゃん、今日の夕ご飯はうちで食べていきなさいよ。せっかく来たんだし」
「いや、私は修二に報告をしに来ただけですから」
「そんなこと言わないで。就職先が決まったんだし、ちょっとした御馳走作るから。せっかくだから、秀君たちも呼んだら良いじゃない」