君を愛する
「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます。秀たちにも連絡しときますね」
 私はそう言うと、携帯を取り出し秀たちにメールを送った。
 しばらくすると、秀たちが揃ってやってきた。
「彩香。就職先の内定貰ったんだって? 俺数えきれないほど面接落ちてるよ」
「ありがとう。私だってたくさん面接落ちたよ。まさかこんな早い時期に内定貰うなんて思ってもなかったからさ、秀だって大丈夫だよ。美咲たちはもう内定貰ったんだっけ?」
 私は美咲たちの方に目線を移して聞いた。
「私と里穂は内定貰ったよ。でも、愛恵がまだ内定貰ってない」
「まあ、私も地道に頑張って面接を受け続けるよ。焦っても良い結果は出ないしね。秀も私と一緒に頑張ろうね?」
「ああ、まだ内定貰っていない人が俺一人じゃなくて良かったよ」
 そんな話をしていると、後ろから修二のおばさんが話しかけてきた。
「玄関で立ち話していないで、居間にいらっしゃい」
「はい、今行きます」
 私はそう返事をすると美咲たちは靴を脱ぎ、私たちは居間へと向かった。
 私たちは居間にあるソファに腰を下ろし、テレビを見ながら談笑してた。
 ふとキッチンで料理をしているおばさんの方に目をやると、忙しなく料理をしていた。さすがに私たち五人分の料理をしようとすると、ちょっとした御馳走でも結構な量になると思った。そんなおばさんの姿を見た私は、キッチンの方へ向かった。
「おばさん、私に出来ることがあったら何でも言ってください」
「あら、彩香ちゃんは休んでても良かったのに」
「いえ。せっかく夕ご飯を御馳走になるので、少しでも手伝わせてください」
「言葉に甘えて手伝ってもらおうかしら。じゃあ、この野菜を包丁で切ってもらえる?」
「はい、分かりました」
 私は野菜と包丁を手に取り、俎板で切り始めた。
 全部の野菜を切り終えると、おばさんの方に目をやった。
「おばさん、全部切り終えました。他にやることはありますか?」
「もうそれだけで十分だわ。ありがとう、彩香ちゃん」
 私は軽くお辞儀をして再び美咲たちのもとに戻った。
 しばらくテレビを見ながら談笑していると、キッチンの方からおばさんの声が聞こえた。
「もう夕ご飯出来るわよ。彩香ちゃんたちも少しだけ準備手伝ってくれないかしら?」
「はい、分かりました。今行きます」
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