君を愛する
 私が大きな声で返事をすると、美咲たちもキッチンの方へと向かった。
 私たちは小皿や箸、コップなどを出して食卓の椅子に腰を掛けた。
 少しするとおばさんが料理を持ってきた。その料理はちょっと所ではない、豪勢な料理が出てきた。
「結構豪勢な料理ですね。料理を作る前はちょっとした御馳走を作るって言っていたのに」
 私は微笑みながら言った。
「ええ、作っているうちに調子に乗っちゃって。彩香ちゃんのせっかくの記念だし、良いじゃない」
 おばさんは少し苦笑いをしながら答えた。そんな時、秀が早速料理に手を付けようとしていた。
「早く食べようぜ。彩香の就職内定祝いなんだし」
「就職内定していない秀が言うことじゃないでしょ。早く内定決めてもらわないと、私も安心できないでしょ?」
 里穂が怒り口調で言いながらも、少し不安げな顔で言った。
「分かってるって、里穂のためにも頑張るから。もう少し辛抱しといてくれ」
 秀がそう言うと里穂を抱き寄せ、里穂は秀の胸に自分の顔を埋めた。
「さあ、料理が冷めないうちに食べちゃいましょう」
 おばさんが言うと、私たちは料理に手を付け始めた。
 料理を食べながら談笑を続け、料理を食べ終わる頃には夜遅くなっていた。
「もうこんな時間か。もうそろそろ帰らないとダメだな」
 秀が腕時計を見ながら呟いた。
「そうだね。じゃあ、もうそろそろ帰る?」
「うん、私も帰ろうかな。彩香はどうする?」
 美咲にそう聞かれた私は少し考え込んでから答えた。
「今日は私も帰る。修二に良い報告出来たし、今日は満足だから」
「そう、じゃあ帰ろうか。おばさん、料理御馳走してくれてありがとうございました」
 美咲がそう言いながら深々とお辞儀をすると、私たちもお辞儀をした。
「全然良いわよ。いつでも遊びにいらっしゃいね」
 私たちは再びお辞儀をして家を出た。
 その後それぞれ家に帰り、私も帰路についた。私が玄関のドアを開けると、優人がよちよち歩きで私のことを出迎えてくれた。
「優人、ただいま。遅くなってゴメンね」
 私は優人のことを抱っこしながら言った。すると、お母さんが居間の方からやってきた。
「優人、ずっと彩香のことをずっと待っていたのよ。ママはまだ帰ってこないの? ってずっと言っていたわよ」
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