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「………やめろよ」

しばらくして陣は低い声で呟いた

「やめない」

「お前馬鹿じゃねぇの?」

「馬鹿だよ」

あたしはほんとに馬鹿だよ

「俺がどんなに辛いか冴慧にはわかんねぇのかな」

「……。」

あたしは腕に力をこめた

「………同情でこんなことされても嬉しくねぇから」

「……。」

あたしは何も言わなかった
陣の言ってることが図星だったから何も言い返せなかった

「だからやめろよ お前なんか大嫌いなんだよ」

陣の背中から心臓の音が聞こえる



「那智に惚れてる冴慧なんか…まじで嫌いなんだよ」

「……え?」


動揺したあたしが力を緩めた隙に陣は身体のむきをかえた

陣と向き合うかたちになる

「そんな顔すんなよ」

陣はオレンジ色の頭をかきながら笑った

いまにも崩れそうな笑顔だった


陣はそのまま美和のほうを見る

美和の髪の毛を撫でた

「答えてやれなくて悪ぃな 美和ちゃん」

そう言った陣の肩は震えていた

「笑顔でおくれなくてゴメン」

彼はもう一度振り返る

あたしは見上げるように陣を見つめる


「畜生…俺 超カッコ悪いじゃねぇかよ」

――ちゅっ

「……っ」

おでこに軽いキス

「好きだよ 冴慧」

「………。」

唖然

陣があたしを?
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