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「いま……なに考えてたの?」

あたしは立ち止まって問いかけた

「え?」

陣は少し進んでから止まった

「冴慧のこと……考えてたんでしょ」

「おい杏…」

あたしはキッと陣を睨み付けた

「あたしといるのに……冴慧のこと考えてたんでしょ」

どうしても嫌味っぽい言い方になってしまう

陣は困った顔をしてあたしを見ている

「約束したでしょ?あたしのこと好きになってくれるって言ったじゃない」

「…………杏」

だんだん怒りが悲しみに変わってきた

涙が溢れそうになる

「落ち着けよ杏」

陣はそんなあたしをみてなだめるように言った

すごくすごく辛そうな顔で

あたしは涙がこぼれるのをこらえながら言った

「……っ変なこと言ってごめんね?でも不安なの」

陣は軽く唇を噛み締めながらあたしの言葉を聞いている

「すごくね すごく不安なんだよ 冴慧が好きなのはわかるっ 痛いほどわかるよ?忘れるためにあたしの告白にOKしてくれたのもわかる…でもっ」

その時だった

陣があたしの腕を引っ張って抱きしめたのは

「……え?陣」

「ごめんな 杏」

陣の声は震えていた

「忘れるよ ちゃんと忘れる だから……もう少し待っててくれよ」

「………っ」
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