「涼ちゃーん!!」
母が小走りに玄関までやってきた。生後3ヵ月をすぎた涼は最近ますます重くなってきた。母はその少し重くなった涼を抱き抱え居間にいる父のもとにむかった。居間にいた父は私が知っている厳格な父とは全く違う別人だ。目尻が下がり孫に頬づりしている。何年か前に、この父を想像できた人は誰もいないだろう。そのくらいきびしい人であった。
「そうそう、この前あんた宛てに手紙がきてたのよ。」
そう言うと母は台所に、それをとりにいった。もう結婚して2年がたつ。住所変更もしている…誰からだろう…
はいっ!っと手渡された手紙は案内状の用なものだった。松田 結様…旧姓のまんまだ。
「渡瀬くんの、お母さんからよ。13回忌のご案内ですって…早いわねぇもうそんなに…」
私は黙ってその案内状に目を通した。渡瀬 絋の13回忌のご案内…久しぶりに目にする渡瀬 絋という名前の文字と今朝見た夢が、頭の中で重なった。
ヒロ・・・
「今度の日曜らしいわよ。お母さん達がまた涼ちゃんみてるから行ってきたら?」
母はそう言ってあたしの肩をポンと叩いた。
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