Love 4 U
「ねぇ。お父さん、遅くない?」

「そうか?いつも、こんなもんだけど…」

「いや、遅い!この仕事、お父さんがいないと出来ないコト知ってるハズよ」


父待ちで、イライラするユリアにリョウは、まあまあとなだめる。

「親父ももう歳だから…なあ、いたわってやってくれよ…」

「何?私が苛めてるみたいなイイ方。ひどっ~い」

「そ、そんなつもりで言った訳じゃ…」

「じゃ、どういうつもりよ」

「そんなにイライラするなって。たぶん、もうすぐで親父も着くからさ…」

「そう?じゃ、家に電話して」

「な、なんでだよ?」

「確認よ。ただの確認。早く、早く」

「わ、分かったよ…」
― ったく、親父が出たらどうすんだよ。

結婚したとたん、ユリアが一段と怖く感じる、リョウ。

親父もユリアに怯えているのが目に見えて分かっていた。

小さい親父が、更に小さく見える。

それに反して、仕事が早く片付いていく。


親父か仕事か。
何かを犠牲にしないと、この世の中上手く回らないらしい。

「それが、家では親父…か…」
リョウが呟く。




「あっ、もしもし?親父…?」

リョウは、もし父親が電話に出たら『間違えました』と言って切るハズだった。

なのに、かばうハズの父親をリョウは裏切ってしまった。


うっかりと…

いや~な汗が流れるリョウ。

「す、すいません。ま、間違えました」
今更ながら、リョウは携帯を切ってみた。


今度は、リョウの悲鳴が街中に響くバンだった。





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