何処かの小さな恋物語

「?」

不思議に思い立って見ると、『右をみろ→』と書いてある。
指示通り右を見るとまた紙があって、今度は『下を見ろ↓』とあった。
『←左』『上↑』『←左』『上↑』『右→』『上↑』

何も考えず無心で紙の指示に従って、俺はかなり上を向いていた。
そろそろ首が疲れてきたと思ったら『その首の角度のまま後ろを振り向け!!』とあった。

くるりと体を反転させたら
「ぁ」
さっきまではなかった、『大好き!』と大きく書かれた大きな紙が視界に飛び込んできた。

途端、小さくも確かな衝撃が俺を抱き締める。
彼女だった。
俺の胸に顔をうずめていて、表情は見えない。
「こんな、」
「…え?」
「こんな私だけど、彼氏でいてくれる?」

素直に『好き』と直接言えない、イタズラ好きな愛しい彼女。

小さな頭に、優しく手を置いた。

「当たり前だろ」
お前の相手なんて、俺ぐらいしか出来ねぇって。

そう言えば、君は顔を上げて俺の好きな表情を見せてくれる。

可愛いイタズラがバレた子供みたいな、照れたように笑う君の顔。

君は知らないだろうな、俺がその顔を見たくて態と引っかかっているって。

天井から現れる前によじ登ってるとこ見ちゃったし。
鞄の時だって、開ける前にチャックが少し開いていて髪が見えたから察しはついていたし。
…まぁ偶に本気でビビることもあるけれど。
見ていてハラハラするからほどほどにしてほしい。
危なっかしいから。
心臓ドキドキだから。


今回も、何かあるだろうと勘づいていたし。

騙されたふりしていれば、こんなに可愛い君が見れるんだからな。
今日も明日も、俺は驚かされるでしょう、と。



「あのねー、クッキー焼いたんだよー!」

「へーどれどれ…(絶対ハバネロ入りだな)」

「うふふー」


―――
おとぎの呟き

リア充爆発せよ。
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