何処かの小さな恋物語
幸せ計画
「子供は二人欲しいなー」
「男の子と女の子一人ずつ欲しいよね」
「一姫ニ太郎って言うしな」
「子供できたら親ばかになりそうだよねぇ君」
「そういうお前は鬼嫁になったりしてな。あ、もう既に鬼か」
「コラ」
「パパとお父さん、どっちで呼ばせようか…。」
「気がはやいよ。君に似た男の子なら活発で生意気な子になるんだろうねぇ」
「お前に似た女の子なら絶対可愛いだろうな。将来美人になる。絶対嫁にはやらねぇ」
「だから気がはやいよ」
「やっぱ住むなら一戸建て?子供できたとき考えるともっと広いとこがいいよな。今より部屋は2つ増やしたい」
「そんなお金あるの?」
「馬っ鹿お前、そういうんは地道にだな」
「じゃあもっと出世して稼がなきゃ」
「おう。任せとけや」
「あら頼もしい」
「来年には式あげよう。お前の花嫁姿みたい。」
「うん」
「なあ」
「うん」
「好きだ。」
「うん」
「大好きだ。」
「うん」
「愛してる」
「うん」
「一緒に幸せになろう。」
「…」
「新しい家に住んで、子供つくって、温かい家庭築いて、さぁ」
「…」
「一緒に、俺と、お前で」
「…う、ん」
「幸せに、なろう」
「っう、ん。うんっ」
「一緒に、一緒、に」
「ごめん、ごめんね」
「、」
「ありがとう。もう幸せ。もう十分幸せ。」
「…」
「一緒に、幸せになれなくて、ごめんね。先に私は消えちゃうね。」
「…」
「好き。大好き、大好き。」
「俺、も」
「ごめんね、大好き。愛してる。だから、私がいなくなっても幸せになって。」
白い病室。
窓から見える桜の木が満開に咲く頃にはもう、私はいなくて。
一緒に花見しようって言ったのにね。
私はもういなくなるから。
先月彼がくれた結婚指輪。
薬指と一緒に彼の涙で濡らされていく。
式を挙げる前に私は死んで。
子供が出来る前に私は消えて。
一緒に叶えていく筈だった未来予定。
約束したのにね。
一緒に幸せになろうって。
約束破ってごめんね。
大好き、愛してます。
叶うことのない幸せ計画。
→