抱きしめて
龍稀side
今日は仕事を切り上げて
早く帰ろうと思っていたのに
こんなに遅くなってしまった。
お陰で、どしゃ降りの雨。
もはや、傘の意味などない。
帰り道の途中人影を見つけた。
女だが、何故1人なんだ。
何故だか気になってしまった。
「おい。」
声をかけたものの
なんの返事も返ってこない。
もう一度、呼んでみるが
うんとも寸とも言わない。
なんだ、この女は。
その女は急に立ち上がり
俺の前から消えようとしたが
腕を引っ張り、引き止めた。