100万本のチューリップ(短編)
『…淳、おい、淳!!』

和也の声に淳はハッと顔を上げた。

汗が流れ落ちた。

『淳?授業終わったよ?』

和也が心配そうに淳を見つめていた。


「…あぁ…。」


淳は気のない返事を返した。


『大丈夫か?』

「…女の子が手振ってた。ちゃんと風景もあった…。」

『…。』

「これ本当にただの夢かな…?」

『…夢の事、考え過ぎなんだよ。気分転換しに行くか?』

「…え?」


和也は淳を連れ出し、カラオケや淳が好きなお店に行ったり、食欲がないと言う淳だが、何とかご飯を食べさせたりして

淳が夢の事を忘れてくれるように

和也なりに助けてあげたつもりだった。


だが
淳に笑顔は戻らなかった。

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