100万本のチューリップ(短編)
『はぁ…っ、はぁ…っ。』

淳が振り向くと、息を切らした和也が淳の肩を掴んでいた。

『何…急に走り出して…。』

「…あぁ…ごめん。」


淳はやっと我に返った。


『で、どうした?』

「歩いてたんだよ。あの女の子が。」

『…夢の中の?』

「ただの夢じゃない。本当に存在する子だよ。あの子がいつも俺を呼んでいるんだ。」

『……。』

「どこに行けばあの子に会えるのかなって思ってたんだ。やっと会えたと思ったんだけどなぁ。」

『…ただ似てる人物とかじゃなくて?』

「見間違えるわけないよ。凄く…凄く綺麗な子だった。」


淳は切なそうな瞳をして、下を向いていた。


まるで少女に恋をしているかのように…。


「あの子を見た時、不思議と恐怖感は無かった。またここで会えるかな。」


『…なぁ淳…言うのずっと迷ってたんだけど…もしかしたら、今以上の、想像もつかないような事が起こってしまいそうで言えなかったんだけど…。』

「……?」

『お前が夢で見たチューリップ…丘だって言ってたよな…。 お前さ…
100万本のチューリップ畑を…知ってるか?』
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