100万本のチューリップ(短編)

少女からのメッセージ

「…和也。」

淳はベンチに座り、100万本のチューリップを眺めながら
小さく名前を呼んだ。

『ここか?』

「多分…。似てる。夢の中の景色と…。」

『…そっか。』


ふと和也が遠くを見つめると、小さな建物を見つけた。


レストランやカフェからだいぶ離れた場所にあり、そこはもうチューリップはなく、
明らかに観光客が来ない場所だった。


『淳…あの建物は何だろう。』

「…?」


お店ではないようだ……家?

その建物は古い木で作られている。


和也と淳は黙って立ち上がり、その古い建物の方に歩き出した。


建物の前には
『管理室 立入り禁止』


と、これもまた古い看板が立てられていた。


『管理人…。』


和也は呼び鈴を鳴らしたが、どうやら留守みたいで誰も出て来なかった。


『仕方ない…しばらくベンチで座って待つか。』


和也と淳は再びベンチの所へ戻った。

< 34 / 52 >

この作品をシェア

pagetop