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遠くで、サイレンが聞こえた。
消防車じゃない。
あれはパトカーの音。
時任渉は急に眩暈を覚える。
足元が崩れていくような気がして、つま先から力が抜けていく。
…ライターはどこにいったのだろう?
まさか、放火したあの場所に落としてきたのか…?
スーツの上着も、ズボンも、ありとあらゆるポケットをまさぐるが、ライターは出てこない。
「…ああ、煙草が吸いたい」
時任渉は、手に持ったままの煙草の箱を握りつぶす。
どうやら、家に帰っても今夜のことは忘れられそうにないようだった。