桜の木の下で -2-
「ねぇ、優希」
「っ…はい……」
耳元で低音ボイスで囁くなんて…
先輩は確信犯だ。
しかもいつもならちゃん付けなのに今は呼び捨て。
先輩はわたしの頭を撫でながら、
「…いつになったら名前で呼んでくれるの?」
と悲しそうな声を出した。
「……え?」
「ずっと先輩って呼ぶし、しかも敬語だし…なんか距離感あって嫌だ」
「そ、そんな……」
先輩のこと呼び捨てにだなんて、無理だよ…。しかも敬語もダメって……
「もっ…もし、先輩のことを呼び捨てで呼ぶのに慣れたときに部活でうっかり言ってしまったらどうします?」
「……いいじゃん、別に」
「なっ…!ん、んじゃあ敬語やめてしまった場合部活ではどうすれば…」
怯まないわたしに呆れた先輩はため息を吐いた。