『若恋』若の嫉妬【完】
風に白いドレスが翻り揺れる。
ティアラを載せた髪も靡いた。
りおに施された化粧が似合っていて、普段もきれいだがもっときれいだった。
「悪りぃな。劇を台無しにしたな」
「?」
「きれいだ。衣装も化粧も似合ってる」
「あ、うん。ありがとう」
もう何も頭の中に浮かんでこない。
偽物キスシーンを見たくないからなんとかしようと思ったが拐ってきてしまった。
「りお、俺は、」
「うん?」
靡く髪を耳に掛けて俺を見る眼差しが穏やかだ。
「俺はおまえが……」
「え?」
気配が突然してドアが勢いよく開いて体が重なるように潰れていた。
「仁……」
「樹?育子?」
ドアの横にはあちゃーと言う顔をして苦い笑いを浮かべるのは榊しかいない。
覗きにきたのはいいが潰れてしまって転がっている。
「あのさ、劇大成功だったから知らせに」
バカヤロ。来なくていい