懐古の街
魚屋さんの前で立ち止まり、鮮度の良い秋刀魚を皐月さんが見定めて、指を注す。
「あすこにある秋刀魚が一番鮮度が良さそうだなや。一番奥から二番目のざるに乗っかったヤツだべ。」
俺は、皐月さんに言われた通りのざるを手にとって魚屋の主人を呼んだ。
「すいませーん!この秋刀魚、欲しいんですけどー!」
店の主人が威勢のいい掛け声とともに出てきた。
「ヘイ!らっしゃい!お!兄さんここいらじゃあ、見かけない顔だなあ!」
「あ、今日越して来たばかりの者です。仲神 颯太 と言います。」
俺は、自己紹介を簡単にして、魚屋の主人に頭を下げた。