懐古の街
「ははは。いよいよ、俺はやばいらしいな……幻覚ばかりか幻触まで……」
そういいながら、力なく笑う俺を女の子が見つめて来た。
「わだすは、幻覚なんかじゃなか……わだすは、この、ボロ家についだ、つくも神だなや!」
つくも…神?!
なんだって?!
じゃあ、人間じゃないのか?!
「この家自身がわだすで、…わだすがこの家なんだなや。」
……家賃が一万ぽっきりでなかなか借りてがつかなかった理由がわかった気がする。
この女の子は、妖怪かなんかで、この部屋に住んでいる人を不幸に―――?
……その時俺は勘違いをしていた。
この時の、彼女が、俺を幸せにするために待っていてくれたことをまだ知らない。
これが、皐月と俺との始めての出会いだったんだ―――