不良少年と友達から
“あいつ”の話がでてきたせいでうっすらと額に汗がでてきた。
「雄介くん送ってくるから。」
ぼそっと立ち上がると一緒にたちか上がった千草。
「私も帰るよ」
にこっと笑ってはくれたけど千草がせっかく遊びに来てくれたのに気まずくさせちゃった。
「ごめん…」
「辛気くさい!帰ろっ!」
そして下に降りると、
「おじゃましました」
まさに名家の坊っちゃんのようなお辞儀をして去っていった雄介くんに言葉も出ない。
「あいつはお坊ちゃんかよ」
あははっ、と隣で笑う千草に同感する。
「あれ、言ってなかったっけ?雄ちゃん、京都の和服店のお孫さんで今駆け落ち中でここにいるんだよ?」
いつもみたいににこっと可愛く笑う胡桃。
内容ドラマかよ……。
なんて内心突っ込んで千草とポカンとする。
すっかりさっきの雰囲気は払拭されて、千草は晴れ晴れと帰っていった。
その日はなかなか寝付けなくて、それでも夢にあいつが出てくることはなかった。