一人睨めっこ
『着いたぜっ!!』

 淳が笑顔で言った。

『はーっ、疲れた!!』

 真奈美は少し息を切らしながら言った。

「はぁっ、お前ら……はぁ……速い」

 俺、息切らしまくり。

『ははは!! まぁ入ろうぜ』

 淳は玄関のドアを開けた。

 こいつ、全く息切れてないし……!
 何者だよ!!

「はぁ……」

 ため息をついて、俺は家の中に入った。

 午後五時二十分。
 日没まで後少し。

 俺達は一先ず淳の部屋に戻った。


「どうするかな……」

 後十分程で日が落ちるだろう。
 極度の不安から口の中が渇き、心臓が嫌な音を立てる。

 今まで日常的にしていた、

 起きる、立つ、座る、歩く、走る、食べる、学ぶ、話す、笑う、泣く、怒る、叫ぶ、遊ぶ、寝る、――。

 数々の、当たり前の動作が出来なくなる。

 そんな未来、想像するだけで嫌になる。
 俺は残り一生、もう一人の俺の中だけで生きるのか?
 魂だけが、体の中で生かされる。

 そんなの――嫌だ。
 
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