一人睨めっこ
 驚いた。

 こいつ、もう一人の俺、スラスラと問題を解いてるではないか。

 迷う事なく。

 そして――

「おーわりっ☆」

 ――もう一人の俺が小声でそう言ったのは、小テスト開始三分後の事だった。

(は、早っ……)

 漏れなく埋められた答案を見ながら俺は感嘆の声をあげた。

 と、その時目の前が真っ暗になった。

 !?!?……って

(寝るのかよっ!!!)

 もう一人の俺は寝る態勢になり、目を瞑っていた。



『――はい、終わりー!!』

 もっちゃんがそう言ったところで、もう一人の俺は目を覚ました。

「ふぁ〜あ、よく寝た」

 もう一人の俺は呑気に欠伸をした。

 よく寝たって十分間だけだろ。

『じゃあ隣の人とテスト交換して丸つけな』

「えーと隣、隣――」

 俺の隣は、葛西真奈美という女だ。
 結構おとなしめで……悪く言えば、地味。

 ま、人の事言えないけど。

「はいどーぞ♪ 真奈美ちゃん」

 もう一人の俺はそう言って葛西にテストを渡した。
 葛西はポカンと口を開けた。

(――何名前で呼んでんだよ!!)
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