一人睨めっこ
 俺って何なんだ……。


 もう一人の俺は本当に
 頭が良くて
 スポーツ万能で
 優しく思いやりがあって
 勉強熱心で
 でも謙虚で
 人気があり人望があり――

 俺がずっとなりたかった、理想の俺だった。
 たった一日で俺の印象をここまで変えた。
 逆に俺の必要性を疑ってしまう…。

(俺なんか居なくてもこいつに任せときゃいい人生送れるのかな)

 でも――俺は俺の体で俺の人生を過ごしたい。
 どんなに地味で平凡な人生でも、他人に体を乗っ取られて過ごすよりかマシだ。

 だから

(おいっ!!!)

「なんだよ〜」

 もう一人の俺が小声で返事をする。

(お、俺の体返せ!!!)

 先程はスルーされたが今度はしっかり言った。

 返ってきたのは


「嫌だ」


 驚くべき言葉だった。
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