一人睨めっこ
『こっちは優兄って呼ぶんだよ〜!』

 駿兄が言った。

『勝手にあだ名を決めんなよ』

 優……兄がツッコミを入れた。

『まぁ俺も優兄って呼んでるし、いいじゃん!!』

 淳が笑った。

 なんか俺……この中に入っちゃ駄目な気がする。

『あっ』

 ふと気付いたように淳が俺を見た。

『兄ちゃん、真琴忘れてる』

『あ、本当だ忘れてたっ!』

 何この兄弟。
 さりげなくいじめか?

『……冗談だから気にするな』

 こそっと小声で優兄が言った。

 あ、この人は味方だ!!
 別に淳達が敵な訳では無いが。

『――って下らない話をしてる場合じゃねぇだろ!』

 淳が床を手の平で叩いて言った。

 いや、お前が怒るところじゃないから。

『真琴、睨めっこした時何かあったんだろ!?』

「えっ」

 気付いていたのか?

『全部話してくれ』

 淳が俺に頼んだ。

 全部って……
 もう一人の俺とか
 頭の中から声とか
 そんなの……。

「言っても信じられないと思うよ」

 俺は冷たく言い放った。
 もしあんな事言って、気味悪がられたら嫌だ。

『――あのさ』

 優兄が口を挟んだ。

『俺達は信じるよ、俺達にもそんな事が……あったから』

 え?
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