一人睨めっこ
「えぇっ!?」

 俺は思わず驚きの声を漏らした。

『実際に食べられた所を見た訳じゃないけど、――母さんはもう居ないんだ』

 食べられたんだからな、優兄はそう言って、どこか遠くを見つめた。
 俺は黙っていた。

『俺は絶望した。死のうと思ったよ』

 俺は愕然とした。
 死のもたらす威力に。

『でも、そんな俺を駿が助けてくれたから』

 優兄は駿を見て、軽く微笑んだ。

『俺はこっくりさんを消すと決心したんだ』

 優兄の目は、強く輝いていた。

『俺は……消す事が出来たよ。一ヶ月と二週間程入院しちゃったけどな』

 優兄は最後の言葉を冗談っぽく言った。

 ……いやいや!!
 入院って凄い大事になってるじゃん!

「そう……だったん、ですか」

『ははっ、こんな話されともリアクションに困るよな』

「はい」

 俺は素直に答えた。

『即答かよっ』

 あ、俺もつっこまれた。

『まあつまり……お前もあった事思った事全部話してみろって!』

 そうか、優兄は俺が話しやすくする為に自分の過去を話してくれたんだ。
 話すだけでも辛いような過去を。
 その思いに答えなきゃ、な……。

「じゃ、じゃあ話します……」
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