一人睨めっこ
「実は――かくかくじかじかで」

『なるほど〜……って真面目に説明しろっ!』

 淳にまでつっこまれた。

「はいはい……俺は順序に従って一人睨めっこをやったんだ」

 俺は真面目に話し出した。

「そしたら水面に映った俺の顔が、にこって笑ったんだ」

 思い出すだけで寒気がする。

「その顔が俺の声で言うんだ…“俺はもう一人の俺だ”とかなんとか」

『もう一人の――俺?』

 駿兄がそう呟き、首を傾げた。

「あ、うん……俺の中に別の俺が居るっていうか」

 自分で説明していて思った。

 ――俺は、二重人格なのか?
 詳しくは知らないが、二重人格って要するに自分の中に別の人格が居るって事だろ?多分……。
 それは今の俺の状況にぴったり当てはまらないか?

『何考えてるんだ?』

 優兄の声で我に返った。

「あ――いや、何でも」

 適当に返事をし、俺は続きを話した。
 もう一人の俺は、俺の理想の自分だった事。
 今日の学校で体を乗っ取られた事。
 体を返せと言ったら拒否された事。
 …………。
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