一人睨めっこ
『誰か来てー!!』

 その時、風呂場の方から声がした。

「葛西の声っ!?」

 もしかして、葛西に何か――!

 俺は部屋を飛び出した。

『行ってこいよ、発情期――ってもう行ってるし』



『早くしてー!』

「葛西!!!」

『え、あっ、ちょっと待っ――』

 俺は勢い良く洗面所のドアを開けた。

「かさ――――っえ!!?」

 そこには……体にバスタオルを巻いただけの葛西の姿があった。
 火照った顔、体が俺の気持ちを盛り上がらせる。
 長い髪から水が滴り落ちている。
 透き通るような綺麗な肩が露になっている。
 俺はその姿に、完全に見惚れていた。

『藤崎…………』

 見ると、葛西が鬼のような顔で俺を睨んでいた。
 俺は我に返った。

 やべーっ!!!!

「いっいや! これは――その――違う!! そんな……」

 時既に遅し。

『っの――』

 葛西は近くにあった洗面器を構えた。

 え、それ絶対痛いって。

『変態野郎ーーーっ!!!!!』

 葛西はそう叫んで、洗面器を振りかざした。
 洗面器は、見事俺の頭にクリーンヒットした。

「あ…………」

 振りかざした瞬間、葛西が巻いていたバスタオルが床に落ちた。
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