一人睨めっこ
『きゃああああぁぁっ!!!!』

 葛西は慌ててまたバスタオルを巻くが、俺は見てしまった。

『みみみっ……見た?』

 俺は葛西の問いに答えずに、しゃがみこんだ。

 まじで痛いんだけど……頭。

 って言うか……

「葛西って……」

『なっ、何よ!?』

 葛西はまだ俺を睨んでいる。

「意外と貧にゅ……ぐはっ!!」

 最後まで言う前に、二度目の攻撃を食らった。

『さっさと出てけ!! この発情期ー!!!!』

 俺は洗面器で何度も殴られながら、洗面所を飛び出た。

「痛ぇ〜ってか用事何だったんだよ?」

『バッグの中から櫛取ってきて!! ただしお前は持ってくるな!』

 ドア越しに葛西が叫んだ。

 俺滅茶苦茶嫌われたっぽいな、うん。

「はぁー……」

 大きな溜め息を一つして、俺は部屋に戻った。

 部屋に戻ると、にやにやした淳が櫛を持って立っていた。

『洗面所の会話、ここまで筒抜けだったぜ発情期さん?』

 あーっ、最悪……。
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